2月11日から13日に行われた5項目に渡る住民投票の結果、ウィーンの地下鉄は週末は24時間運行となることが決まった。土曜未明と日曜未明、祝日の未明(つまり金曜深夜、土曜深夜、休前日深夜)に、これまでの終電である午前0:30からこれまでの始発である午前5時までに各路線に運行されるとのこと。運行間隔は15分。従来運行されていた30分おきの深夜バスサービスは、週末は路線が変更される。(平日はこれまで通り。)準備期間を経て、開始予定は9月3日深夜(4日未明)となった。(ソース1,ソース2)
追加で市が負担する費用は1年あたり500万ユーロ(約6.1億円)とのことだ。これは税金から支出される。深夜のサービスとはいっても、運賃などは普通のサービスと同じVOR運賃が適用され、旅行者用の24時間券や72時間券、1ヶ月券、1年券なども使うことができる。現在の週末の深夜バスの利用者が毎週末16,000人ほどだそうだ。このうち一定程度がシフトすることになる。
施策としては比較的幅広い世代の支持を得ており、若年層に至っては9割以上が支持しているというデータもある。(ソース。むろん、この手のデータは質問の仕方1つでがらりと変わる点には注意。)政策としては、市政与党の社会民主党も、野党の民族党も支持しているため、比較的容易に広く浸透したといえそうだ。
24時間運行することのメリットは、利便性があがることがもちろん上げられるが、それだけではないだろう。ウィーン市交通公社は、投票前に出された広報にて、利点(Advantage)として深夜帯の公共交通網のわかりやすさの向上、速達性の向上、魅力向上による新たな顧客獲得、世界の都市と比較した上での先見性の確立、深夜バス一部路線での騒音の軽減を上げ、欠点(Disadvantage)として、5億円の追加費用、深夜バスが平日と週末で別のものになること、駅のセキュリティー面の強化が必要なこと、これまで成功してきている深夜バスサービスを部分的に終わらせることになること、地下鉄の高架橋区間での騒音を揚げている。これに加えて、深夜サービスがあることによる治安面の向上が期待できるだろうし、「夜遊び」する人が増えて飲み屋にはメリットになるだろう。一方、タクシーには打撃になるだろう(ただしウィーンはタクシーそのものが比較的少ないため、影響は限定的だろう。)
ちなみに、現在ではウィーン市の人口の9割以上が、何らか深夜サービスにアクセス可能な地域に居住しているとのことだ。(この深夜サービスにはASTAXという電話予約・乗り合いタクシー型公共交通サービスも含まれる。ASTAX=Anruf-Sammerung-Taxi。)この率はおそらく変わらないだろう。
蛇足になるが、以前、夏の間だけ、S-Bahnの路線が24時間運行していたことがあった(Meidling-Foridsdorf間。20分間隔)。確か2008年の夏であったと思う。いつの間にか無くなってしまったように思うのだが、いったいどうしたのだろう?
それにしても、終電間際になると朝ラッシュ時並かそれ以上にぎゅーぎゅーになる電車がおなじみの日本には想像もつかないことだろう。公共交通の根本が「営利サービス」ではなく「公共サービス」として道路などと同じように考えられていることの一つの明確な現れ方だろう。