Union Internationale des Transports Publics (UITP) が主催する国際会議 「UITP Vienna 2009」に、オーストリアの学生の立場で参加させてもらってきた。世界各地から公共交通に関する事業者と研究者が集まる最大規模のイベントだ。いろいろ収穫は多いが、とりあえずその所感をいくつか。
一つ目。日本の鉄道事業者や車両メーカーの存在感は薄い。鉄道車両メーカーやJRなどが展示するブースがあったが、どうも何を売り込みたいのか今ひとつはっきりしなかった。どうも海外マーケティングが弱いのは日本の鉄道関連事業の特徴なようで、担当者も残念がっているようだった。なお、日本のバス関係の展示はなし(まあたいしたバスを作ってないっていっちゃ作ってないか)。
二つ目。ソウルのT-moneyと呼ばれる電子マネーICカード(Suica)の類が考えているICカードの共用化は面白い。関西地区のスルッとKANSAI、香港のOctopus Card(八達通)、シンガポールのEZ Link Cardと、T-Moneyの4つを統合する構想を持っているそうだ。SuicaとPasmoが別れている場合じゃない。なお、ソウルのT-Moneyの導入の旗振り役はソウル市交通局だとのこと。ここはかなり権限を持っているところで、ソウル市内の交通施策の統合などを行っているところ。
三つ目。アラブ首長国連邦は強気だ。ドバイの施策の一つに自転車レーンがあった。あの暑さでも自転車レーンをちゃんと作って、「自転車交通の世界の中心になる」ってんだからまあ凄い意気込みだ。アブダビもLRT(ライトレール)網を300km以上に拡張する構想を持っているそうな。ちなみにドバイは2011年のUITP総会の開催地。
四つ目。アルストムとボンバルディアの路面電車は強い。両者とも路面電車の主力商品(それぞれCitadis, Flexity)を売り込んでいた。アルストムのブースにはトルコのイスタンブールに納入される予定のCitadisの模型があった(ただのCitadisだけど、イスタンブールあたりで1000編成くらいにあるんじゃないかな?路面電車で新規に1000編成は、日本の感覚じゃ半端じゃないよ。)。
五つ目。ロシア製のバスが意外と乗り心地がよさそうだった。機械部分の性能などはわからないけど。寒さなどには強そうだが、実際の所はどうなんだろう?
六つ目。香港のMTRCから来ていた人(国際会議のチェアを務めていた)がなかなかやり手な感じの人だった。香港は強し。
ところで、国際会議セッションで、JRが行った、東京圏の鉄道駅開発に関するプレゼンテーションは、オーディエンスが最も聴いていなかったプレゼンテーションではなかろうか。同じ研究所の研究員に感想を求めたら「事実の紹介で終わった感じ」だそうだが、確かにそんな感じ。オーディエンスはというと、あんまり聴いている様子はなくて、ウィーンの旅行ガイドを読んでいる人までいた。個人的な感想を言えば、「新たな資金源へのアクセス」というテーマだったわけで、リテール事業やホテル事業、不動産事業などが公共交通の整備のための資金源になっている、とかそういう話しがあれば興味を持って聴いてもらえたのだろうが(そもそもリテール事業とかホテル事業が公共交通への投資の資金源になっているとは思えないのだが、実際どうなんだろう?)、そのような説明はほとんどなし(実質的に、売り上げの3割りがこれらから来ているという説明だけ)。
そもそも、駅ナカ開発が、公共交通の本質かというと、そうではない気がしている。その後にあった、オスロの、市内に自動車が入る際の課金の一部を公共交通の助成に回している事例の方がよっぽど面白かった。混雑課金などと呼ばれるシステムで、シンガポールやロンドンが有名だけど、オスロの場合はフェーズなどによって収入の20?35%を公共交通の助成に充てているそうだ。
国道にも最近自転車レーンとか作ってますね.
いまいち感が否めませんが.
日本は自治体は行かなかったんでしょうか.
交通の政策や税金が強力な国々はいいですね.思想がある.
日本は道路ばかり・・・.その財源さえ・・・.
自転車レーンは(国道であれ市道であれなんであれ”管理者”にかからわず)都市内ネットワークとして作らないと意味がないと思うのですがね・・・・日本では田舎道にばかり”(似非)自転車レーン”がある印象を持っているのは私だけではない気がします。
日本からは自治体は出ていませんでした。マドリード、ドバイ、モスクワなどは、自治体あるいは交通部門として展示を出していましたが。交通施策という点では日本から発信するものはあまりになさ過ぎるということなのでしょう。
展示は明日までやっているのでもう少し見てこようと思います。パリのRATPグループの海外展開戦略みたいに面白い展示がいっぱいあったので。