ウィーン周辺には「ホイリゲ」(Heurige)と呼ばれるワイナリーが直営している居酒屋が多い。もともとは16世紀にウィーン市がオスマントルコに包囲されていた時代に市民が近隣の農家にワインを直接買いに行ったのが始まりらしいのだが、現在では市街地はずれのワイン畑に面したあたりに集まっている。
代表的な場所は19区のグリンツィング(Grinzing)だが、ここはちょっとツーリスティック(観光客向け)だ(路面電車38番の終点周辺)。あまり観光客が押し寄せないところとしては、同じ19区のノイシュティフト・アム・ヴァルデ(Neustift am Walde)からSalmansdorfにかかて(市バス35Aの終点付近)、21区のシュタマースドルフ(Stammersdorf)から市外に出たビーサムベルク(Bisamberg)あたりまで、そして23区のマウアー(Mauer)のあたりが代表的だ。個人的には、Bisambergが好みだが、行くのが少々大変なのが難点だ。(ここにあるTerassenheuriger Martin Trimmelはオススメ。ただし旅行者向きではない。外のテラスが夏は見晴らしが良く、冬は室内の暖炉の香りがよい。ドイツ語しか通じない。)
ホイリゲとは正式名称ではなく、正式には「ブッシェンシュランク(Buschenschrank)」という。「Heuriger」と名乗る所も多いが、伝統的な所は「Buschenschrank」と名乗るところも多い。Buschenschrankには独自の法律が適用され、本格的な食事を出すことはできないため、軽食しか出さないところが基本的だが、レストラン免許を取得して本格的な食事を出すところも多い。ワインはもちろん自家製が基本だ。家族経営が多いが、企業化されたホイリゲもある。
ウィーン以外にも、南に30kmほど行ったバーデン(Baden)周辺、南東に50km程離れたノイジートラー湖周辺、北西に50km程はなれたヴァッハウ渓谷、ウィーン空港から程近いBad Deutsch Altenburg周辺、北東の「ヴァインフィアテル(ワイン・クオーター)」(Weinviertel)と呼ばれる地域にはホイリゲが多い。ヴァインフィアテルにはWeinvierteller Kellergassenというものまであって、夏ならサイクリングをしながらワイナリー巡りができる。
ところで、ウィーンはドイツ語のスペルで「Wien」だ(発音は「ヴィーン」)。ワインは「Wein」だ(発音は「ヴァイン」)。「i」と「e」を入れ替えるだけだ。だから、Wienと打とうとしてWeinと打つタイプミスを私はよくやってしまう(Weinに住んでいるなんて、なんだか酒を浴びそうで怖い。)。しかし、私だけではないらしい。とある中華系スーパーのホームページの住所には、堂々と「Wein」と書いてあった。
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