スカイヨーロッパの破産後

再び、何度か記事にしている(see. 9月3日記事)、ウィーンなどを拠点にしている格安航空会社「スカイヨーロッパ」の破産の件だ。日本語では新華社系のサイトで記事になっていた。

同社は、以下のようなメッセージを出している(ウェブサイトから引用)。

Dear Guests

Please be advised that SkyEurope has suspended its sales and operations immediately.

Those of you who have purchased flights with a credit card, please turn to your credit card issuing bank to seek refunds for unused portions of SkyEurope’s flights.

In case you have paid directly to SkyEurope in other means than credit card (e.g. bank transfer, cash), please be advised that a refund may not be possible.

If you have ordered your flight tickets via a travel agency or organizer, you should discuss the matter with them first.

If you are already at the destination or have rented a car through SkyEurope’s business partner, you may stay at the hotel and use the vehicle during the period originally agreed. You must, however, order a return flight from some other airline at your own expense.

You may also wish to contact your insurance provider to seek further guidance and support.

We regret for the inconvenience that have been caused to you.

オーストリアでの報道によると、現時点では、まだクレジットカードから引き落とされていないスカイヨーロッパの航空運賃は、カード会社に引き落としを止めてもらうことで対処できるとのこと。少なくともアメリカン・エキスプレスは対応しているとのことだ。(ただし、ヨーロッパ以外で発行されたカードの場合は厄介だろう。)

それ以外の場合の返還は絶望的に近い模様だ。上のメッセージにも書いてある通り、旅行会社で予約した場合は旅行会社に相談するように、と丸投げ。クレジットカード以外の手段で決済した場合(これはすでに決済が済んでいる場合、と理解すべきだろう)は返金不能。旅行保険などを当たるように、とも書いてある。

ウィーンからのスカイヨーロッパフライトで出かけてしまっていて、ウィーンへ帰る場合、オーストリア航空、フライ・ニキ、ライアンエアーなどが最大150ユーロ程度で片道航空券をオファーしているので、これを利用するべきだろう。行き先によっては、インタースカイなどもオファーをしている。

これからスカイヨーロッパのフライトを予約している場合は、他の航空会社で予約し直すしかないだろう。

いやはや、いつか倒産すると思っていたけど、きり良く31日にばったり破産申請。Bye Bye SkyEurope.

事業のご破算は9月1日:スカイヨーロッパ

何度か記事にしているスカイヨーロッパの件だが(前の記事)、ついに同社は運航停止の事態に陥った。9月1日のこと。

運航停止を告げるウェブサイトの画面。

運航停止を告げるウェブサイトの画面。

DerStandardの記事によると、「資金不足を切り抜けて運航を継続するための一時的な資金繰りができないため」とのこと。

スカイヨーロッパからのメッセージ

スカイヨーロッパからのメッセージ。返金方法などが書いてあるが・・・

返金方法はなかなかお粗末で、とりあえず「カード会社に返金を要請せい」とのこと。そんな返金の要請に乗る会社がどこにあるんだろうか?買ってしまった場合の返金はかなり絶望的だ(DiePresseの記事)。28万席分のチケットが影響を受けるとのこと(DerStandard)。

スカイヨーロッパで休暇に出かけた人たちはウィーンに帰ることができず(記事)、それを狙って各社が帰るための片道オファーをだしている(記事)。オーストリア航空は150ユーロで、FlyNikiは99ユーロで、ルフトハンザは正規運賃の半額で、そして最大のライバル(?)ライアンエアーは「Ryanair Skyeurope Rescure Fare」として25ユーロで、それぞれオファーしている。WizzAirも30ユーロで同様にオファーしているが、プラハまたはブダペスト発着。

いずれにしても、ご破算。Bye Bye SkyEurope.

オーストリアでも日本の選挙への関心は高い。

日本の首相が訪欧してもまったく報道しなかったドイツ語圏のメディアでさえも、今回の日本の選挙に関してはずいぶん関心が高いようだ。とりあえずオーストリアとドイツの新聞に出ている記事の見出しをいくつか翻訳して紹介しておこう。みんな、なかなか面白い見出しを付けている。なお、以下は、Google Newsで上の方にある記事の見出しを翻訳しただけだ。

とまあ、こんな調子だ。みんな割と言いたい放題。ちなみに、今の時間(土曜日13時)に各国のGoogle Newsを開くと、International(国際)ニュースのトップ3の中に日本の選挙が来ていることが多い(ドイツ、フランス、イギリスなど)。

ちなみに、英語版Wikipediaには「Japanese general election, 2009」というページまである。

「ロンドン パリ 高速列車」

タイトルに書いたような「ロンドン パリ 高速列車」という検索キーワードでこのウェブサイトにたどり着く方が結構いらっしゃるようだ。せっかくなので、まとめておこう。

結論からいうと、その列車は「ユーロスター」(”Eurostar“)という名前で、リンク先のオフィシャルウェブサイトにあるような、フランス・アルストム社製の車両で運行されている。ロンドンのセント・パンクラス(St. Pancras)駅から、パリの北駅(Gare du Nord)までを2時間20分ほどで結んでいる。また、このほかに、ロンドンからベルギーのブリュッセルまでの列車もある(所要2時間)。ブリュッセル側の駅は南(Midi)駅。

日本の旅行会社でも切符を売ってくれるが、やたら高い手数料を取られる。オフィシャルウェブサイトで割引運賃で購入する方が賢明だろう。日本市場向けの英語ウェブサイトがある。

なお、パリからブリュッセル、さらにその先のオランダ・アムステルダムやドイツ・ケルンへは、Thalys(タリス)という高速列車が走っている。パリからブリュッセルまでは1時間半ほど。こちらも、ウェブサイトで割引運賃を買う方が、日本の旅行会社に手配を頼むより断然お得。なおThalysの乗車券はSNCF(フランス国鉄)のウェブサイトでも購入できる。SNCFのウェブサイトでは、TGVなど他のフランス国内の列車の乗車券もオンラインで購入できる。むろん、オンラインの割引などが受けられるからお得。いずれの場合も、受取りは駅の自動券売機にクレジットカードを差し込んで行う方式で、「えきねっと」や「エクスプレス予約」と同じ。

いずれの都市間も距離がとても近いことに注目されたい。ロンドン-パリなら、さしずめ東京?大阪といったところ、パリ-ブリュッセルなら、東京?仙台程度だ。

ユーロスター。パリ北駅にて。

ユーロスター。パリ北駅にて。

こちらはタリス。ワインレッドの色が印象的。パリ北駅にて。

こちらはタリス。ワインレッドの色が印象的。パリ北駅にて。

ウィーンからとばせなくてもまだ航空券を売るスカイヨーロッパ

経営危機に陥っているスカイヨーロッパは、ウィーン空港への施設使用料の支払いが遅れ、「最終期限」の15日になっても支払いを完了できず、ウィーン空港から地上業務の停止を食らっている。乗客は、スカイヨーロッパが用意したバスでブラティスラバ空港まで向かい、そこから飛行機に乗るという、トンデモナイ事態になっている。挙げ句の果てに、本来ウィーン発となるフライトのブラティスラバへの変更時刻も、8月18日の夜10時半になっても19日の分がインターネットに掲載されないなど、もう、めちゃくちゃだ。

さらにめちゃくちゃなことに、ウィーンからブラティスラバに変更されたフライトも、ほとんど定時運航していない(ブラティスラバ空港のウェブサイト参照)。たとえば、本来はウィーンに22時に到着するはずの、バルセロナ発のNE3123便は、この混乱のためにブラティスラバ到着が23:20となっている。さらに、機材繰りができなくなっているせいであろう、遅れに遅れて、ブラティスラバ着の今日(18日)の実際の時間は02:40である。午前2時半にブラティスラバの空港に降ろされて、どうしろというのだろう?本来の出発時間から1時間半遅れ、それがさらに3時間20分遅れていることになる。

ブラティスラバ空港の本日の到着案内。スカイヨーロッパ(NEで始まる)は大半が遅れている。

ブラティスラバ空港の本日の到着案内。スカイヨーロッパ(NEで始まる)は大半が遅れている。

さらに驚いたのは、今日になって「9月1日から来年2月までのウィーン発のフライトは全て40%オフ」セールだそうだ。ウィーンから飛ばせずにブラティスラバに緊急避難して、しかも大幅に遅れを出している会社で、しかも存続そのものも疑問視されているような会社の航空券を、誰が買うのだろう?もはや宝くじ気分で買うしかなさそうだ。

誰が買うんだろう?

誰が買うんだろう?

いやはや、末期症状に近いようだ。

スカイヨーロッパの経営危機について続報

2週間ほど前にまとめて書いた、ブラティスラバやウィーンを拠点とする格安航空会社であるスカイヨーロッパについて、その後情勢がずいぶん変わったのでまとめておく。なおリンク先は基本的にドイツ語か英語のソースだ。

8月11日に、ウィーン空港を管理するFlughagen Wien AGから、「8月14日午後3時までに滞納している施設使用料を納付しない場合は、スカイヨーロッパのフライトへの取り扱い業務を停止する」という警告文が発せられた。

8月14日、結局スカイヨーロッパは、期限までに滞納分を納付することができなかった(ソース)。「永遠の資金難」という見出しの記事まで出る始末。ちなみに、滞納は2,000万ユーロとも3,000万ユーロとも見積もられている(ソースソース

8月15日のフライトから、ウィーン発着のすべてブラティスラバ空港(約50km離れている)に離着陸させるという緊急避難的措置を実施している(詳細)(ソース)。とりあえず17日までの変更時刻がウェブサイトに掲載されているが、この文章を書いている17日午後5時前の段階になっても、18日の変更時刻が表示されないなどの混乱ぶり。

なお、この措置で、7000人が影響を受け、1?2時間の余分な時間がかかったそうだ。乗客は、ウィーン空港でチェックインをして、荷物を持ってブラティスラバ空港に行き、そこで荷物を預けて搭乗、という手順らしい。(ソース

8月17日時点では、ORFの報道によると、ウィーン空港の管理会社にはスカイヨーロッパから支払いの申し出は出ていないとのこと。先行きはきわめて不透明な情勢だ(ソース)。巷では、「会社が運航停止に陥るのは時間の問題」「(本社が所在する)スロバキアの政府から支援を受けられるのでは」などいろいろな憶測が飛び交ってはいるが・・・

また、筆者と研究室の同僚で試してみたところ、この先の冬までのフライトはまだ予約可能な状態になっている(いったい誰が予約するんだろう?)。予約システム上の情報は、ブラティスラバから飛ぶことになっている明日18日のフライトも「ウィーンから」出発することになっていて、更新されていない。

なお、これは喜ぶべきチャンス、とばかりに、オーストリア航空と、FlyNikiが、「スカイヨーロッパで帰って来れなくなった人のために」150ユーロで帰りのフライトをオファーしているようだ。なお、同様のオファーをWizzAirも30ユーロで行っている。

WizzAirが、スカイヨーロッパへの顧客の「救済」フライトの宣伝している。

なお、本日(17日)付けのDer Standardには、スカイヨーロッパの失敗の原因を分析する記事が出ている。ドイツ語が読める方は読んでみるといい。

Ausfall = 運休。ウィーン空港のウェブサイトから。

Ausfall = 運休。ウィーン空港のウェブサイトから。


ブラティスラバへ変更しての発着は、とりあえず「19日まで」ということになっているようだ。DerStandardの記事にルポ風のものが出ていた。

Mach was du willst! – ÖBB Sommerticket!

オーストリア国鉄(ÖBB)から、Sommerticket (Summer Ticket) という、かなりあっぱれなオファーが出ている。7月4日から9月14日までの10週間の間、オーストリア国内の国鉄路線全てに乗り放題、というチケット。

購入できる要件は、26歳の誕生日を迎えていないことと、VORTEILSCard <26という、1年有効で国鉄全線が半額になるメンバーシップ・カードを持っていること。

料金は、20歳未満は25ユーロ、20歳以上26歳未満は59ユーロだ。今年から値上げされたが、期間が延長されたしÖBBの運賃そのものも値上げされているのでやむを得ない程度だろう。20歳未満には、ウィーン周辺(市内を除く)のバスが乗り放題になる35ユーロの特別バージョンもある。

驚くのはこれだけではない。オーストリア西部のチロル州では、夏休みの間、18歳未満のチロルの住民は、全ての地域公共交通機関を無料で使うことができる(ソース)。飛び地である東チロルと州都のインスブルックを直通するイタリア国内経由の列車にも適用される。

どちらも、若年層に公共交通機関をプロモートする政策の一環だ。おそらく、免許を取得して車で移動することになれてしまう前に、公共交通の利便性を実感してもらうことで、車利用を抑制し、将来の公共交通の利用者を育成しようというものであろう。「今」という時点では営業上の収入を減らすことにはなるが、今後数十年の時間スケールでは公共交通機関の利用者増につながり、かつ自動車の社会的不効用を抑制できる、という考えに立っているに違いない。とすれば、きわめて筋の通ったプロモーションであろう。

nissan.exe, vrag.exeといったウイルスへの対処(備忘録)

kawasaki.exe, nissan.exe, vrag.exeといった類のウイルスがヨーロッパで蔓延しているようだ。いろいろな名前の亜種があるらしい。ウイルス検索ソフトでは検出されない。

症状は、

  • USBディスクなどのリムーバブル・ドライブに感染し、
  • autorun.infを作成してディスクを差し込んだ時に活動するように記述し、
  • “CRNI” “BORO”といった保護付きディレクトリの中にexeファイル, desktop.iniを作成してしまう。
  • Windowsがある起動ドライブに感染する場合は、c:の下にあるRECYCLERの下にランダムなディレクトリを作成し、そこにexe、desktop.iniを作成する。
  • PC起動時にウェブサイトに勝手に接続する、など症状がある。
  • プロセスとして、kawasaki.exe, nissan.exe, vrag.exeなどとして走る。

といったもののようだ。現時点では、8月4日にボスニア・ヘルツェゴヴィナ、5日にオランダで確認されたのが最初のようだ。

対処法は、とりあえずautorun.infを削除する。Windowsからは、保護付きディレクトリを削除する術が見つからないので、ドライブをUnix系OSのPCに接続してマウントし、root権限で当該ディレクトリを削除する、という手順になった。

Cドライブに感染してしまった場合は、RECYCLERの下に作ったファイルになにかを依存するように設計されているらしく、Windowsからはやはり削除できないので、KnoppixなどでCDからPCを起動して当該ファイルを削除するしかなさそうだ。

感染の拡大は、どうやら感染したリムーバブル・ドライブ(USBドライブなど)を通じて起るようだが、インターネット経由でも感染しうるようだ。

以上、備忘録。こいつのせいで仕事が進まなかった。


追記:Cドライブに感染した場合の対処。nissan.exeが感染していたので、nissan.exeとして記述しているが、他の名前で感染している場合は適宜読み替えてほしい。

基本的には、レジストリの値を削除した上で、C:\Recyclerを削除する。

まず、レジストリのうち、HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Windows NT\CurrentVersion\Winlogon にある「TASKMAN」を削除。ここにnissan.exeを起動する命令が書かれている。

ここで再起動しないのがポイント。Windowsを再起動すると、このレジストリの値が「復活」してしまう。

当該ウイルスのRecycler内のファイルはWindowsから削除できないので、(CDブートの)Knoppixを使って削除。CD-ROMからKnoppixを起動して、Cに該当するハードディスクをマウントし(Knoppix6なら最初からマウントしてくれている)、RECYCLERを削除。

これで完了。

超低床路面電車の火災: ウィーンのULF

先週の日曜日に、ウィーンを走る超低床路面電車(ULF: Ultra Low Floor)で火災があったらしい。市内南部の下町と郊外を結ぶ67系統で日曜日午後に発生したそうな乗客が炎に気づいて、運転手が停止させてドアを開けて全員が避難(ORF.at)。原因はまだ不明だが、タバコの可能性などが指摘されている(wienweb.at)。2人の専門家が調査中とのこと。現在196編成あるそうだが、発注中の104編成については納入を一時的に見合わせているそうだ(vienna.at)。

スカイ ヨーロッパ の経営状況の件、まとめてみた。

会社更生手続きに入っているスカイヨーロッパの経営状況について、ウィーンに拠点の1つを置いている航空会社なので、興味があったからあれこれ調べてみた。なお、会社更生手続きはスロバキアの法律に基づいて行われるが、スロバキアはEUに加盟しているため、資産保全などの手続き・法律上の取り扱いはEU加盟国全てにおいて適用されるそうだ。

なお、スカイヨーロッパは、格安運賃を売りにする「ローコスト・エアライン」の一つ。客1人あたりの売り上げは70ユーロ(1万円)程度である。

さて、新聞などから顛末を整理すると、以下のような状態らしい。

2008年末から2009年初頭にかけて、リース料の滞納を理由にGECAS (GE Commercial Aviation Services) からのリース機6機の返還を求められ、返還した。その後Air Slovakiaからリース機2機を(1機をWet-lease(クルーや保険なども含めたリース)、1機をDry-lease(機体のみのリース))し、合計10機を運用するようになった。合計14機の機材があったので、4機減ってほぼ2/3になったことになる。これによって、1月以降、プラハ発着便を中心に大幅なキャンセルなどが発生したらしい。(AFP通信Wikipediaなど)

6月23日に、ブルガリアのソフィア空港と、パリのオルリー空港での、空港使用料の滞納により、それらの空港に駐機中の機材が差し押さえられた。ソフィア空港にあった機材(MD80!)は同日に離陸を許可されたが、オルリー空港の機材(B737-700)は支払いが完了するまで離陸を認めないとして、空港を管理する Aéroports de Parisにより差し押さえられた(DerStandard)。 なお同日にはブカレストでもトラブルで駐機することになったようだ(Wirtschaftblatt)。

7月上旬には、パリにある機材はいったん戻される望みが出たようだが(DerStandard)、未だ差し押さえられたままとのこと(29日時点、DerStandard)。

同時期には10月で期限が切れる営業許可の延長に関する懸念が出ていたが(DerStandatd)、今日(7月31日)に、オランダのFOCUS Equity BVから16.5Mio Euro (1億6500万ユーロ)の資金調達ができる目処がついたことで、延長できる見通しになった(Die Presse, Der Standard, Wiener Zeitung)。

ひとまず資金面では目処がつき始めているが、果たして旅客の方はどうだろう?特に23日に機材が差し押さえられて以降、機材繰りができなくなり、連日のように大幅な遅延をしているのが実態のようだ。定時運航率を示すオンタイム・レコードは悲惨だ。各路線とも大幅な遅れを出していて(平均1時間近い)最大268分の遅れというのが出ている。

ウェブ上でのユーザーの評価もがくっと下がっている(www.airlinequality.comなど) 。今月初頭には、5時間の遅れなども報告されている (fodors.com)。また、SkyEurope: Europe’s worst low-cost airline?との記事も。航空会社として重要な、「顧客の信頼」をどんどん失っているようだ。

さて、何がこのような状況を導いたのだろうか?少なくとも1年ほど前の段階では、会社として黒字こそ出していなかったものの、こういった大きなトラブルにはなかったようだ。ウィーンの株式市場に上場してからの、長期的な株価の下落と、経済不況での乗客減少が大きく影響しているらしい。とはいえ、経済不況下でも比較的安定しているローコスト・エアラインもあるから、経営戦略に問題があるのでは、ということになる。

個人的な見解を書いておくと、拠点戦略上も余り上手いとは言えない戦略を採ったのではないだろうか?拠点となる空港は、現時点ではブラティスラバ、ウィーン、プラハであるが、このうちウィーンとブラティスラバの空港は50km程度しか離れていない。そこに2つの拠点を構えるのは、小規模な航空会社としてはどう考えても効率が悪い。また、ポーランドのクラカウや、ハンガリーのブダペストのように、数年のうちに拠点を撤退してしまったところも多い。こうした経費もかさんでいるだろう。

ルートの設定も余り上手とはいえないように思う。

競合という観点から見ると、ブラティスラバやウィーンを拠点とする路線の多くでは、陸上の交通機関やライアンエアー、FlyNikiと競合している路線が多い。特にイタリア方面(Bergamo, Pisa, Treviso)やイギリス方面(Luton, Manchesterなど)といったところでの、ライアンエアーとの競争は資金を消耗したであろう。また、昨年からは稼ぎどころのロンドン-ウィーン線にeasyJetが参入してきた(早くも1日2便になっている。この間乗ったが、LF(Load Factor, 搭乗率)は80?85%程度のようだった。)。さらに、自家用車と競合しうる近隣のクロアチア方面などの路線も多い。

ターゲットとする旅客層という観点からみても、スカイヨーロッパのそれは曖昧だ。明らかに労働力の移動(労働者の移住)をターゲットにした路線設定をしているわけでもない。ルーマニアやブルガリア、バルカン半島の諸都市からウィーンへの路線が多いのであれば、移住者を狙っていることも予想できるが、年間を通して運航されているのはブカレスト(ルーマニアの首都)とソフィア(ブルガリアの首都)のみ。

移住者をターゲットにすれば、帰省などで一定の安定した需要を見込めると考えられるが、休暇利用をターゲットにすると景気の影響をもろに受けるであろう。ライアンエアーやイージージェットの成功の一因は、東欧方面からイギリスや西欧への労働者移住系の路線と、イギリスからスペインの海岸などへのイギリスの中産階級の別荘(ある種の「移住」だ)保有需要喚起という、比較的安定した需要が見込めるところに飛ばしていることだと思うのだが、スカイヨーロッパの路線からはこういった戦略は読み取れない。移住者を主なターゲットにした戦略は、ポーランドに拠点を置くWizz!Airやルーマニアに拠点を置くBlue Air、トルコのSun Express、スペインのVuelingなどに見られる。

さて、今後どういう道をたどるのだろうか?さしあたっての資金供給はなんとかなりそうでも、肝心の顧客がSkyEuropeブランドから離れて行っているようだ。とすると、空港の利用枠などをそのままに、easyJetなど、どこかに買収されて、大幅な構造の転換を図って、ブランド名も新たに再出発、というのがよいのではないだろうか。おそらく、ねらいを定めている航空会社はすでにいくつかあるだろう。(なお、easyJetの名をあげたのは、すでにBoeing 737-700を20機保有している、という理由だけで、それ以上の意味はない。easyJetにとっては、ウィーンの拠点と、SkyEuropeが保有する4機のBoeing 737-700がくっついてくるなら、安い買い物になるんじゃないだろうか?ローコスト・エアラインにとっては、機種はなるべく統一されていた方がよい。)

どうやら、以下の写真のようなライアンエアーの挑発が現実になってきているようだ。

Bye Bye Skyeuropeと大きく書かれたRyanairの機体。2007年11月にブラティスラバ空港で。